第1回 「自分を枠にはめることなく」

兵庫県赤十字血液センター 品質情報課
秋田 真哉 先生 (医療技術短期大学部1回生)

友人や同僚との話の中で、性格診断や占い、タイプに分けるといったお話は、皆さんよく 話題にされるのではないでしょうか。中でも仲間を二分して比較する、タイプ別定義などは面倒な解説本が無くても互いに軽口で言いやすい話題ですね。“理論派か感性派”“アナログ思考かデジタル思考”“右脳派か左脳派”その良し悪しはともかく、自分がどちらに入るのかといった質問や問い掛けに遭遇されたことは一度や二度ではないでしょう。その都度自身の経験や嗜好、時には過去の成績等も思い出しながら問答されたのではないでしょうか。これら二分法の根底にあって、今でも人格形成の早い段階で問われるのが『理系人間か文系人間か』だと思います。「僕は理系なので文章表現は苦手」とか「数式なんて文系の私に要るの」とかは、周りの人々も含めて今でもよく耳にします。私のことはと言いますと、機械イジリが好きだった少年時代に、早々に“理系だな”と決めていたようです。そこに追従すべき成績は考慮されなかったのかもしれません。そして、理系の進路としてある意味究極は医療系だと思います。検索、分析、統計、考察、判断等の過程すべてに数式や理論が必要とされ、最終結果として“是か非か”“陽か陰か”を求められる職種、その先には患者様の治療に貢献し、医療の進歩に寄与する。それがこの道に進もうとした最初の動機づけでした。そして、それらをより身近なものとして私が感じられた分野が「輸血学」であり、今の職場を選択した理由でもあります。

現在、私は臨床検査技師として長年の輸血検査業務を経て、品質情報課という部署で「品質保証」業務に精励しています。赤十字における「品質保証」とは「品質システム」を基盤とした血液製剤の品質維持の保証体制と言えます。ここでいう「品質システム」とは検体検査や輸血検査のことではありません。日常点検やメンテナンスのことでもありません。血液製剤が医療機関へ届くまでの、採血から販売までの全ての工程において、モニタリングし問題点をくみ上げ、向上性をもって改善していく。例えば、ある時期にある場所で生産性が落ちたなら、それは人員の問題か、手順の問題か、器材の問題か、その原因を追究し、改善の提案をして解決を図る。そのための手順であり、実践する組織づくりであります。その業務内容は、日々記録される数値結果だけでなく、各現場の声に傾聴し、業務の問題点を把握する。医療機関からの相談・意見・指摘にも広い視野を以て対応していかなければなりません。その時に必須となるのが、情報を入手しやすくする「コミュニケーション力」であったり、問題点を指摘し、改善を図るための手順を分かりやすく表現する「文章力」であったりします。

ここでお話を前に戻しますと、“理系だな”と決めて歩んできた道も、今では数字が意味する内容を如何に活かせるか、伝えられるかの業務に変わり、「文章表現力」が業務の成否を左右しています。「理系だから文章表現は」といった甘えは、私たちが進む分野には当てはまらない時代となっています。これから一歩を踏み出す皆様には、医療系どの分野を選択されても、最初から両方がバランス良く求められることになるでしょう。どちらかに苦手意識のある方も、遠慮なくぶつけられる学生のうちにチャレンジして、自身の可能性を狭めることないよう頑張っていただければと思います。